出典:「日本の刺繍-飛鳥時代から江戸時代まで-」 徳川美術館 (1998)
日本の刺繍は飛鳥時代から奈良時代にかけて中国から伝えられ、
平安時代~安土桃山時代を経て現在に至るまで、
多くの方々の一針一針の手刺しによって伝承されてきました。
中には刺繍にとっては困難な時代も多かったと思われます。
今、私が日本刺繍にまがりなりにもたずさわっていられるのも、
その方々のお陰と感謝しています。
若かりし頃、一人旅の途中で教科書に載っていた奈良・中宮寺の
「天寿国繍帳(てんじこくしゅうちょう)」を見たいと
思ったものの、ようやく中宮寺へたどり着いた時にはちょうど閉門。
とても残念でした。
しかし、あれから何十年たったでしょうか。
平成10年秋に徳川美術館(名古屋)の特別展「日本の刺繍」に、
あの「天寿国繍帳」が展示されてると聞いて駆けつけました。
またまた閉館間近ではありましたが、ぎりぎりセーフで見ることができました。
天寿国繍帳」は、飛鳥時代(592~707年)の頃、
聖徳太子の王妃であった橘大女郎が亡き聖徳太子を偲び、
太子が往生された天寿国の様子を采女達に刺繍させたものです。
奈良・中宮寺に伝えられており、全体ではなく断片が残っているのみですが、
国宝に指定されています。